よくある質問

税務調査に関してよくある質問をいくつか取り上げてみました。

米国法人は日本の税務調査の対象外なのか?

米国に本社がある法人(外国法人)そのものは日本の税務当局の税務調査対象にはなりません。ただし、日本に支店がある場合は、その支店のみで法人税の申告義務があります。従って、その支店を対象とした税務調査があり得ます。外国法人の日本支店は原則的には国税局が税務調査を担当します。内国法人(日本国内に本社がある法人)であれば原則的に資本金1億円以上の大規模法人が国税局担当となっているのに比し低い基準とも思えます。国税局員は税務署員に比べると優秀な人が多いと思われ、厳しい税務調査になるかもしれません。ウェブでよくアメリカのハワイ州やデラウェア州で会社設立を勧めるサイトを見かけますが、実際日本国内で営業活動を行う場合は、日本支店としての申告が必要になります。となると、会社の規模にかかわらず国税局が調査担当となります。ただ、それほど規模が大きくないと判明すれば、後に税務署に調査担当が変更されることがあります。


修正申告をすると、税務調査は入りやすくなりますか?

申告内容次第ですが、入りやすくなることは無いと思います。むしろ自主的に修正申告するというのは、税務署の指摘を受ける前に自分でミスを認めることですので、心証はいいと思います。逆に申告をした後、経費の計上漏などが判明し、更正の請求という法人税の還付請求手続を行う場合は、税務調査が入りやすくなります。財政が厳しい折ですので、あまり還付をしたくないという理由もあると思いますが、もう1つの理由として、還付については、法律に調査をしてから還付しなさいと明記されていることです。従い、申告の際に、経費の計上漏が無いように注意を払うべきです。計上漏が判明した場合でも、内容的に来期の経費として処理できそうなものであれば、更正の請求を見送ることも検討すべきだと思います。また、更正の請求を行っても、経費の計上漏が故意である(仮装経理)と認定された場合は、即座に還付を受けることができないので注意すべきです。銀行の融資審査の心証を少しでも良くするため、経費を計上漏して申告し、審査終了後、更正の請求をする行為をたまに見かけますが、これは典型的な仮装経理事例ですので慎むべきです。


税務調査って小さなコンビニやスーパーにも来るものですか?

たとえば平成20年の実績によると、下記の業種が脱税が多いので、重点業種になっていると思われます。

国税庁HP参照<平成20事務年度における法人税等の調査事績について>

順位 業種目 不正発見割合(%) 修正申告1件当たりの不正脱漏所得金額(千円) 前年順位
1 バー・クラブ 56.1 11,022 1
2 パチンコ 46.4 53,644 2
3 廃棄物処理 37.0 14,744 3
4 再生資源卸売 34.3 21,360 3
5 構築用金属製品製造 33.9 11,190 5
6 土木工事 32.5 8,371 8
7 金属打抜き・プレス加工 32.4 10,780 10
8 職別土木建築工事 31.5 6,997 7
9 一般土木建築工事 31.4 11,768 9
10 自動車修理 30.8 3,350 6

(1)不正発見割合の高い10業種(小分類)/平成20年度

順位 業種目 修正申告1件当たりの不正脱漏所得金額(千円) 不正発見割合(%) 前年順位
1 パチンコ 53,644 46.4 4
2 建売、土地売買 30,629 25.2 1
3 貿易 27,977 16.1 -
4 電気・通信機械器具卸売 27,012 14.7 -
5 鉄鋼卸売 24,321 22.8 -
6 新聞、出版 24,041 11.1 -
7 電子機器製造 22,038 16.4 8
8 再生資源卸売 21,360 34.3 6
9 生鮮魚介そう卸売 20,431 19.3 -
10 物品賃貸 19,515 18.0 -

※国税庁HP引用<平成20事務年度における法人税等の調査事績について>

税務署は税務調査対象となる個人や法人の選定基準を明確にすることは当然ないのですが、下記のような基準が一般的に言われています。

1 個人より法人の方が圧倒的に税務調査が多い。

2 赤字より(前年度以前の赤字の繰越を利用して税額が0となる場合も含む)より黒字の方が税務調査が多い。

3 現金の入出金が多い商売は税務調査が多い。

4 会社規模が大きくなるほど税務調査が多い。

5 調査重点業種は税務調査が多い。





実は、コンビニとスーパーでは同じ現金を扱う商売でも、税務調査を受ける確率が格段に違います。コンビニは商品の入出庫、経費の支払、レジの現金の入出金がすべてシステム化されコンビニチェーンの本部で管理されており、毎月の収支報告が正確に出ます。つまり、現金の入出金をごまかす隙があまり無いのです。反面スーパーは規模にもよりますが、システムが不完全だったり、故意に修正することが可能となると、申告漏や脱税ができる隙があると考えられ、必然と税務調査を受ける確率が上がります。


税務調査が終了した後、何日程でその回答結果がくるのですか?

税務署員は会社で資料を調べ、会社及び顧問税理士と論点整理をした後、税務署に持ち帰って署内で検討し、その上で、顧問税理士又は会社に修正内容の提案をしてきます。通常は会社での調査終了後1週間から10日以内に連絡がくることが多いです。しかし、修正事項が特にない場合は連絡が3-4ヶ月後だったり、連絡がないのでこちらから催促するようなケースもあります。税務署員も忙しいので、追徴税額が見込めない案件については後回しにして、やがて忘却してしまうのかもしれません。


解散した会社にも税務調査は来ますか?

よく不正をした場合に、解散して、会社を無くしてしまえば、税務調査がこなくなるという話を耳にしますが、解散しても、清算人(解散後の残務整理をする人をいい通常はその会社の元代表取締役)に対してその会社の解散前の行為についての税務調査をしにくることがあり得ます。たしかに解散した会社が税務調査を受けることはあまりないのですが、それは、解散時には会社が大赤字になっているケースが多いので、税務調査をしても追徴税額が発生しそうに無いからという程度の理由だと思います。ですので、黒字状態での解散はなぜ商売を辞めるのかという疑念が湧きますので、むしろ税務調査を誘発するかもしれません。


自営業で新築購入すると税務調査が入りやすくなる?

大きな買い物を自己資金で行った場合には税務調査に入りやすくなると思います。たとえば、毎年赤字の会社で社長の給料も毎月10万円程度しかないような会社やその社長が、突然数億円の不動産を自己資金で買ったとなれば当然その資金の出所が問題になります。税務署としては、プール金(売上をごまかしたり、経費を水増しして得たお金)の存在を疑うのです。ですので、借入金で購入していればさほど問題になると思えません。


税務調査の連絡を受けてから、間違いに気づき自分で修正申告することは可能ですか?

これは可能です。しかも連絡を受けてから、調査に着手するまでの間の修正申告による追徴税額の支払に対しては、加算税(原則的に税額に対し10%)が賦課されません。ただ、連絡を受けてから修正申告したとなると、連絡がなければ修正申告しなかったのでは無いかと疑われるので、税務調査の心証はよくないかもしれません。